デモグラファー会議

第三回「デモグラファー会議オンライン開催」のご案内

2020年  11月20日(金) 13時−17時半 Zoom利用によるオンライン開催 (事前申込が必要です。下記)


申し込みの手順
1)以下のグーグルフォームを使い、申請をしてください(電子メールアドレス、氏名、所属だけの簡単なものです。)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeg_EHTE5CAlONMdJNPgEzaqASQ3SJpBTsEkgTpLta-9waW5Q/viewform
2)11月17日(火)にシンポジウム実施のZoom URLを登録メアドに送信します。
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<シンポジウム>
企画者:Richard Shefferson(東大・教養), 高田壮則(北大・地球環境)

Demography という単語はよく「人口統計学」と訳されますが、生物学では一般の生物集団の統計データを扱う学問を指す言葉として使われます。ですから、人間を対象とする研究者も植物を対象とする研究者も実は「デモグラファー」ですが、今のところそういう名前を冠する学会はありません。そこで、このシンポジウムは日本にいるデモグラファーたちの情報交換の場、デモグラフィー研究の理論や手法の学習の場を提供する目的で開催されます。動植物、人間の生物集団統計を扱った最新の理論・応用研究を紹介します。多数のご参加を期待しています。

この会は例年東大駒場キャンパスで行われていたものですが、今年はコロナウイルスの影響があり、オンラインで開催することにしました。むしろ、東京までわざわざ出張することができなかった方々へも大きく門戸を開く機会になるのではないかと期待しています。と同時に、デモグラフィー研究の理論や手法の学習の場として提供されていた「デモグラファー会議ワークショップ」のオンライン化も現在計画中です。ぜひご期待ください。

講演予定者
高田 壮則(北海道大学) 「趣旨説明」 Introduction
富松 裕(山形大)  「スケールの異なる環境変動に対するオオバナノエンレイソウ個体群の応答」要旨
            Population response of a forest herb Trillium camschatcense to environmental variability at different scales
石濱史子(国立環境研究所) 「死なない”植物の絶滅リスクを推定するーシュート行列モデルによるシミュレーションー」要旨
              Estimating the extinction risk of "immortal" tree -simulation analysis using a shoot-dynamics matrix model -
横溝裕行(国立環境研究所)、深谷肇一、ジョン ランブリノス、川合由加、高田壮則 「個体の流れ行列:新たな個体群基本統計量により植物個体群の特徴を明らかにする」 要旨
              Inter-stage flow matrices: a new population statistic derived from life history matrices
Richard Shefferson (東京大学) 「Rパッケージ”Lefko3”を用いて個体史の重要性に迫ってみたい!」要旨
               Addressing the importance of individual history on population dynamics with R package Lefko3



問い合わせ先:高田壮則(北大) takada[at mark]ees.hokudai.ac.jp


講演者の要旨
富松裕氏 要旨:
植物は、気候の変化や生息地の分断化など、スケールの異なる複数の環境変動に晒されている。しかし、このような環境変動に対して植物個体群がどのように応答しているのか、未だ十分に理解できているとは言えない。本講演では、林床植物オオバナノエンレイソウを対象に行った2つの研究―(1)生息地の分断化と気候の年変動に対するデモグラフィーの応答、および(2)緯度に沿った “abundant-center” 分布の解析―を紹介する。


石濱史子氏 要旨:
死亡率は個体群動態を記述するのに欠かせないパラメータであるが,長寿命な木本種やクローン成長する草本種では,個体の死亡が観察される頻度がとても低く、あたかも“死なない”ため,死亡率の推定が困難である。しかし、個体を構成するシュートの“誕生と死”は観察可能な場合がある。生理的に統合されたシュートを持つ植物に適用可能な、シュートの更新動態に基づいた行列モデルによって、絶滅危惧植物ハマナツメにおけるシカ食害の影響と保全対策の効果の推定を行った研究を紹介する。


横溝裕行氏 要旨:
生存率や繁殖率などの野外調査データに基づいて構築される個体群行列から、個体群増加率や弾性度などの統計量が求められてきた。私たちは「個体の流れ行列」という新たな統計量を発見した。「個体の流れ行列」の要素の和は個体群増加率と等しいという特徴を持っており、どの生育段階間の個体の遷移がどれだけ個体群増加率に寄与しているのかを理解することが可能になる。「個体の流れ行列」は、生物の生態学的特徴をあぶりだす新たな手段となりうる。本講演では、植物の個体群行列データベース(COMPADRE)を用いて、「個体の流れ行列」を求め、生活史で分類した機能群ごとの繁殖・成長・滞留の流れに関する特徴を明らかにした研究を紹介する。


シェファーソン氏 要旨:
個体群行列モデルにはいくつかの重要な仮定が設けられている。その中で最も大事な仮定は、ある年の生活史パラメーターはその年間での個体の状態にのみ依存しており、それ以前の履歴には依存していないというものである。この講演では、個体履歴の影響が反映される履歴行列とともに、標準的な履歴なしの個体群行列を作成する方法を考案したRパッケージ, lefko3, を紹介する。また、個体の履歴が個体群動態に与える影響を示すある例を紹介する。